A research programme by the Access to Medicine Foundation

Access to Medicine Index(ATMインデックス)の結果を発表、 貧困層向け医薬品の研究開発は、製薬企業5社による5つの疾患分野が大半を占める

【オランダ・アムステルダム、2018年11月20日】本日、低中所得国における医薬品アクセスの向上に対する取り組みを基に、有力製薬企業20社を対象とした第三者によるランキングである2018年度のAccess to Medicine Index(ATMインデックス)の分析結果が発表されました。開発途上国の人々にとって最優先と考えられる新薬の開発は、製薬企業5社と5つの疾患分野に大きく集中していることがわかりました。

2018年度はタケダが最も大きく躍進し、順位を10上げて5位に入りました。GSKは前回に続きトップを維持しています。ノバルティスは、ジョンソン・エンド・ジョンソンとメルクを抑えて2位に上昇しました。これらトップ4社がグローバルリーダーを形成しています。

このトップグループ4社にサノフィ(6位)を加えた5社が、優先度の高い研究開発の取り組みの69%を占めています。

Access to Medicine Foundation(医薬品アクセス財団)のエグゼクティブ・ディレクターを務めるジェイアスリー・K・アイヤーは次のように述べています。「ごく一部の企業が優先度の高い研究開発負担の大部分を担っている事実を考えると、状況がいかに脆弱であるかが分かります。これらの企業の1社でも撤退すれば重大な影響があると思われます。このグループに参加する製薬企業が増えれば、必要とされるアクセス向上活動の対応力は強化されるはずです。」

ATMインデックスによると、こうした研究開発に対する製薬業界の取り組みは、HIV/AIDS(エイズ)、結核、マラリア、シャーガス病、リーシュマニア症の5つの疾病に重点を置いており、研究開発の半分を占めています。

5つの疾病はすべてグローバルヘルス・イニシアチブの目標であり、それを後押ししているのが国際的な資金援助です。世界保健機構(WHO)などから、優先度の高い研究開発として合計45の疾病が特定されています。

今回の評価は、優先度の高い研究開発の大部分が民間セクターの研究組織によって行われていることを示しています。 しかし一部の企業は、このような援助とは無関係に優先度の高い医薬品の開発に取り組んでいます。その一例として、メルクは住血吸虫症の検査と治療薬を開発に携わっていますが、この疾患は水媒介性の寄生虫疾患で、約2億5,200万人が感染しています。

ATMインデックスのリサーチリーダーであるダニー・エドワーズは次のように述べています。「ATMインデックスは、社会的に優先順位が合意された場合、製薬業界が医薬品アクセスへの取り組みに焦点を当てる上で影響を与えることを明確に示しています。今回の評価では、研究開発段階だけでなく、医薬品が商品化された後に企業がアクセスを向上させる行動においても、そのことを示すエビデンスが見つかりました。つまり、とりわけ商業的採算性が低い分野においては、行動促進や資金援助がある場合、より多くの企業が医薬品アクセスに取り組むことを示しています。」

企業や疾病の集中は、医薬品アクセスにとって重要な他の分野でも見られます。たとえば、いくつかの企業ではより公平な価格戦略や、未だ開発パイプラインにある製品のアクセス計画が増えています

日本企業について

日本企業では2社がここ数年ATMインデックス内での順位を一貫して上げており、初めて上位10社に入りました。

タケダは2018年度のインデックスで最もランクが上昇し、10上げて5位となりました。同社は、アクセス向上への取り組みの責任を最高経営責任者(CEO)に新たに設けたほか、販売担当者のボーナス支給の基準として販売数量の使用を中止するなど数多くの新たな方針を打ち出しました。タケダは入手しやすさを目指す価格戦略をより広く適用したほか、能力向上のための堅実なアプローチを取っています。

エーザイも11位から8位に上昇し、トップ10にランクインしました。エーザイは、新薬へのアクセス計画を策定するための新たなプロセスを設けて研究開発の向上に努めています。そのアクセス計画の1つには、睡眠病や河川盲目症などの顧みられない熱帯病に対する新薬の特許権を放棄するという約束が含まれています。同社はまた、医薬品の寄付に関して引き続き良好な実績を上げています。リンパ管フィラリア症(一般に象皮病として知られる)を治療する広範な寄付プログラムがあり、病気が撲滅されるまで継続することを約束しています。

第一三共は18位、アステラスは19位で、多くの分野において比較的低いパフォーマンスでした。ただし第一三共は、研究開発負担の重い疾病や低所得国に対する研究開発に会社が取り組む姿勢を示した、新たなヘルスケアアクセス政策の立ち上げで進展がありました。アステラスは、結核(TB)治療薬開発のための世界同盟(TBアライアンス)や、顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ(DNDi)における顧みられない熱帯病創薬ブースター(NTDブースター)などにおいて、研究開発のパートナーシップに参加しました。

医薬品アクセス財団エグゼクティブ・ディレクター ジェイアスリー・K・アイヤーは次のように述べています。「これらの日本企業は、いずれも顧みられない熱帯病などへの取組みにおいて長い道のりを経てきましたが、特に低中所得国の重要な革新的医薬品へのアクセス改善を保証する明確なアクセス戦略を持つタケダとエーザイが秀でています。より多くの日本企業が国境を超え、いかにイノベーションや革新的医薬品へのアクセスを改善できるかを検討する上で、それらの企業がモデルケースとなるでしょう。」

ATMインデックスは、過去数ヶ月で日本の投資家からの関心が増大しています。第一生命保険株式会社、三井住友トラスト・ホールディングス、東京海上アセットマネジメント株式会社は、ATMインデックスの投資家宣言への支持を表明し署名しています。これらの企業は、署名企業として投資リサーチおよび、研究開発、価格決定、倫理的行動といった重要なトピックについての企業対話の際にATMインデックスを使用します。また、医薬品アクセス財団は、UBSとともに2018年ATMインデックスの投資家向けローンチイベントを2018年12月11日(火)に開催する予定です。

過去2年間の進展

ATMインデックスは、医薬品アクセスを推進するために重要な企業行動の7つの分野において、各社を評価します。

全体的に見て、製薬業界は医薬品アクセスのアプローチにおいて成熟しています。2016年度のインデックス発表以降、3社が新規または強化されたアクセス戦略を発表しました。5社は、医薬品が十分に行き届いていない人々を明確に顧客対象とする商用モデルを拡大しています。企業はまた、どの国・地域で特許を取得しているかについて透明性を高めており、国際的に医薬品を調達する際に貴重な情報となっています。さらに、1つの国で異なる人口グループに異なる価格を設定する取り組みは、よりきめ細かさを増しています。

しかし、一部の分野は遅れています。例えば、企業は人々が入手しやすいように価格戦略を洗練させていますが、その対象としているのは少数の国に限られ、新興市場が中心です。また、HIV/AIDS(エイズ)に罹患している人々のために推奨されるすべての治療薬について、ジェネリック医薬品の製造と流通がライセンス供与によって可能になったにもかかわらず、その使用はエイズとC型肝炎に限定されていますが、他の疾病に拡大することも可能であると思われます。

2年前と比較して、製薬企業の新薬パイプラインでは、グローバルヘルスにおいて優先度の高い開発プロジェクトが増えています。2016年のインデックス発表以降、少なくとも66の医薬品がパイプラインを経て製品化されました。それらはインデックスが対象とする14の疾病治療で、その半数ががん(癌)を対象としています。それ以外の例は以下の通りです。

  • 3つの新薬で、C型肝炎の主要遺伝子型6種類全てを治療できます。ギリアドはインドのジェネリック医薬品メーカー11社と自発的なライセンス契約を結んでおり、これにより、新薬のうちの2製品が105の開発途上国において製造と販売が可能になっています(ギリアドとアッヴィ)。
  • 現在、7億9,500万人が感染していると推定される回虫および鞭虫駆除用に、子供が飲みやすいチューイング・タブレットがあります。2020年まで年間2億錠の寄付プログラムを約束している企業があります(ジョンソン・エンド・ジョンソン)。

がん

中低所得国ではがんによる死亡が増えており、現在がん患者の死亡率の約70%を占めています。インデックスでは今年初めて、がん治療薬へのアクセス拡大のための企業の取り組みを調査しました。その際に、WHOが全ての医療システムに不可欠と考える医薬品リストに含まれる製品に焦点を当て、結果として71の医薬品を特定しました。ノバルティスは市場におけるこれらの医薬品の割合が最も高く、アクセス・イニシアチブが付いているがん治療薬の半数を占めています。

がん治療薬へのアクセス・イニシアチブを計画する研究開発段階での取り組みは、感染症と比較するとはるかに遅れています。開発の後期段階に達するまでにそうした計画が行われているのは、感染症の場合はパイプラインにある医薬品の54%であるのに対して、がんの場合は新薬候補の5%にとどまっています。

医薬品アクセス財団エグゼクティブ・ディレクター ジェイアスリー・K・アイヤーは次のように述べています。「公衆衛生は、過去数10年で大幅に改善されており、インデックスが評価する全ての製薬会社は一定の取り組みを行っています。しかし医薬品アクセスにおける格差をなくすためには、より多様性に富んだ企業の参加が必要不可欠です。」

メディア資料

報告書に含まれる全ランキング、ランキングの元となったデータ、主要所見のグラフ、数値をご希望の方はご連絡ください。

Access to Medicine Foundation(医薬品アクセス財団)について

ATMインデックスは、グローバル大手製薬企業20社を対象に、低中所得国における高負荷疾病の医薬品アクセスに対する取り組みを分析し、企業行為の7つの分野における医薬品アクセス向上に向けた企業の取組みに基づき企業の格付けを行います。ATMインデックスは、ベストプラクティスや進展が見られる分野を特定するとともに、いまだ重要な行動が必要とされる地域を明らかにします。インデックスは、英国政府(UK AID)、オランダ外務省、オランダ厚生労働省、およびビル&メリンダ・ゲイツ財団が資金を提供する独立非営利研究財団、医薬品アクセス財団が2年ごとに実施しています。

本件に関する報道関係の皆様からのお問い合わせ先

医薬品アクセス財団広報担当

アシュトン・コンサルティング 東川

03-5425-7220

AtMTokyoEvent@ashton.jp


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